照明計画で失敗しないための5つのポイント|プロの知恵

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住まいづくりを考えるとき、間取りや内装材、収納計画などに意識が向きがちです。しかし、空間の印象を大きく左右する重要な要素が「照明計画」です。適切な照明計画は、同じ空間でも全く異なる表情を見せてくれます。

私は数多くの住宅設計に携わってきましたが、後悔の声として最も多いのが「照明をもっと考えておけばよかった」というものです。照明は単に明るさを確保するだけでなく、空間の雰囲気や居心地、さらには生活の質にまで影響を与えるのです。

この記事では、照明計画で失敗しないための5つの重要ポイントを、プロの視点からわかりやすく解説します。これから家づくりを始める方はもちろん、リフォームを検討している方にも役立つ内容となっています。

照明計画の重要性とは?なぜ多くの人が後悔するのか

照明計画とは、空間の目的や用途に合わせて「適切な照度(明るさ)」と「色温度(光の色)」「光の拡散(広がり方)」をプランニングすることです。これは家づくりにおいて非常に重要な要素なのです。

なぜ照明計画が重要なのでしょうか?

いくら間取りやインテリアデザインが素晴らしくても、照明計画がうまく合っていなければ、空間の雰囲気は台無しになってしまいます。例えば、落ち着きのある木目とカラーでインテリアをまとめても、蛍光灯のような白っぽい光を煌々と照らしては、寒々しくなって落ち着きのある印象にはなりません。

照明の色温度の違いによる空間の印象変化を示す室内写真また、書斎など細かな作業をする場所に、ほのかな光を放つ照明器具を設置してしまえば、手元が暗くなって目に負担をかけてしまうでしょう。

多くの人が照明計画で後悔する理由は、「とりあえず明るければいい」という考えで計画してしまうからです。照明は単に空間を明るくするだけでなく、その場所での活動をサポートし、心地よい雰囲気を作り出す重要な役割を担っているのです。

どんな照明器具を設置するかによって、家の印象を全く異なるものにすると言っても、決して過言ではありません。

ポイント1:空間の用途に合わせた「適切な照度」を知る

照明計画の第一歩は、各空間の用途を明確にすることです。リビングでくつろぐ時と、キッチンで料理をする時では、必要な明るさが全く異なります。

照明の明るさは「ルクス(lx)」という単位で表されます。JIS照明基準総則によると、空間の用途ごとに推奨される照度の範囲が定められています。

例えば、リビングでくつろぐ場合は150〜300lx程度、読書やパソコン作業をする場合は300〜750lx、キッチンでの調理作業は300〜750lx、洗面所での身だしなみチェックは300〜500lxが推奨されています。

しかし、同じ部屋でも行う活動によって必要な明るさは変わります。だからこそ、一つの空間に複数の照明を設置する「多灯分散照明」が重要なのです。

多灯分散照明を採用したリビングダイニングの様子多灯分散照明とは、必要なところに必要なあかりを分散して配置する考え方です。これにより、作業に必要な明るさを確保しながら、空間全体の雰囲気も向上させることができます。

従来の「一室一灯」(部屋に一つの主照明だけを設置する方法)では、空間にメリハリが感じられず、華やかさやくつろぎ感が不足しがちです。対して多灯分散照明では、手元の明るさを確保しながら空間全体も明るく、さらにほどよいあかりの分散配置でくつろぎ感が深まります。

私が手がけた30代夫婦の住まいでは、リビングに天井の間接照明、ダイニングテーブル上のペンダントライト、読書用のフロアスタンド、テレビ周りの間接照明を組み合わせました。その結果、「時間帯や気分によって照明を変えられるようになり、家での時間が格段に豊かになった」と喜んでいただけました。

ポイント2:「光の色」で空間の印象を操る

照明の色(色温度)は、空間の印象を大きく左右します。色温度はケルビン(K)という単位で表され、数値が低いほど赤みを帯びた暖かい光、高いほど青みがかった冷たい光になります。

一般的な色温度の目安は以下の通りです。

  • 2700K前後:電球色(オレンジがかった暖かみのある光)
  • 3000K前後:温白色(やや黄色みを帯びた暖かみのある光)
  • 4000K前後:白色(自然な白色光)
  • 5000K以上:昼白色・昼光色(青みがかった冷たい光)

リラックスしたい空間には2700K〜3000K程度の暖かみのある光が適しています。一方、集中して作業をする場所には4000K程度の白色光が適しているでしょう。

異なる色温度の照明が使われている住宅の各空間私がデザインした書斎では、デスクワーク用に4000Kの集中できる光と、読書用に3000Kのリラックスできる光を使い分けられるようにしました。「時間帯や作業内容によって光の色を変えられるのが想像以上に快適」というフィードバックをいただいています。

最近のLED照明には、リモコン操作で色温度を変えられる「調色機能」を持つものも増えています。生活シーンに合わせて光の色を変えられるため、一つの空間を多目的に使う場合に特に便利です。

照明の色温度選びで大切なのは、その空間で何をするのかをイメージすることです。くつろぎたい場所には暖色系、作業や勉強をする場所には自然な白色光を選ぶのが基本です。

ポイント3:間接照明で空間に奥行きと高級感を

間接照明とは、光源を直接見せずに壁や天井などに反射させて空間を照らす方法です。この照明手法は、空間に奥行きや広がり感を与え、高級感のある雰囲気を演出できます。

間接照明の主なメリットは以下の通りです。

  • 眩しさを抑えて明るさを得られる
  • 柔らかいニュアンスが得られる
  • 素材の質感を見せられる
  • 空間に奥行きや広がり感を与える
  • 光源が見えないためすっきりとした印象になる

特に天井の間接照明(コーブ照明)は、空間全体に広がり感を与え、やわらかく落ち着いた雰囲気を作り出します。壁面の間接照明(コーニス照明)は、空間に奥行き感や広がり感を与え、壁面のテクスチャーも引き立てます。

間接照明を効果的に使った住宅の内装間接照明を設計する際の注意点もあります。照明の明るさの予測(照度計算)が難しいこと、反対側の窓ガラスなどに光源が反射して見えてしまうことがあること、メンテナンスが煩雑になる可能性があることなどです。

間接照明を成功させるポイントは、被照射面の素材・ツヤ・色を把握することです。壁や天井の色が暗いと、間接照明の光を吸収してしまって暗く見えてしまいます。白やクリームなどの明るい色を選ぶと、光を効果的に反射させることができます。

また、間接照明が触れる範囲にはなるべくモノを置かないことも重要です。家具などで反射光を遮ると雰囲気が崩れてしまうため、間接照明を当てるスペースは、できるだけ光を遮ってしまう家具・設備・排気口などがない場所を選びましょう。

ポイント4:グレア(眩しさ)を抑えた快適な光環境を

照明計画で見落としがちなのが「グレア」の問題です。グレアとは、強い光が直接目に入ることで生じる不快な眩しさのことです。

グレアがあると、目が疲れやすくなったり、頭痛の原因になったりすることがあります。また、空間の高級感も損なわれてしまいます。

グレアを抑えるためには、以下のポイントに注意しましょう。

  • 光源を直接見ない設計にする(間接照明の活用)
  • ダウンライトなどは深型のものを選び、光源が見えにくいようにする
  • ペンダントライトは光を拡散するシェードがあるものを選ぶ
  • 照明器具の配置を工夫し、視線に入りにくい位置に設置する

私が設計した寝室では、ベッドに横になった時に照明が直接目に入らないよう、ヘッドボード上部に間接照明を設置しました。「以前の家では照明が目に入って眠りにくかったが、今は快適に眠れる」と喜んでいただけました。

また、ダイニングテーブル上のペンダントライトは、食事中の会話の際に相手の顔が見やすく、かつ眩しくない高さに設置することが重要です。テーブル上から70〜80cm程度の高さが一般的な目安となります。

照明器具を選ぶ際は、デザイン性だけでなく、グレアの少なさにも注目してみてください。最近は、LEDの直接光を抑えた「グレアレス」タイプの照明器具も増えています。

ポイント5:調光・調色機能で生活シーンに合わせた光環境を

同じ空間でも、時間帯や目的によって必要な光環境は変わります。朝は爽やかな白色光で活動的に、夜はオレンジ色の暖かい光でリラックスするなど、生活シーンに合わせて光環境を変えられると理想的です。

そこで重要になるのが、照明の「調光」と「調色」機能です。

調光機能とは、照明の明るさを調節できる機能です。例えば、食事の時は明るく、映画鑑賞の時は暗めにするなど、シーンに合わせて明るさを変えることができます。

調色機能とは、照明の色(色温度)を変えられる機能です。昼間は白色光(4000K程度)、夜はオレンジ色の暖かい光(2700K程度)というように、時間帯や目的に合わせて光の色を変えることができます。

最近のLED照明には、リモコンやスマートフォンアプリで簡単に調光・調色できる製品が増えています。中には、時間帯に合わせて自動的に色温度が変わる「サーカディアンリズム」に対応した製品もあります。

あるご家族の事例では、リビングダイニングの照明をすべて調光・調色対応にしたことで、「朝は爽やかな光で目覚めよく、夜は温かみのある光でリラックスできるようになった」と大変喜ばれました。

調光・調色機能を活用することで、一つの空間を多目的に使いこなせるようになります。特に、限られた広さの住宅では、この機能が空間の有効活用に大きく貢献します。

照明計画の失敗例から学ぶ

最後に、よくある照明計画の失敗例をいくつか紹介します。

  • とりあえず多めにライトを設置したが、眩しすぎて使いづらい
  • ライト色を確認せずに購入し、まとまりのない雰囲気になった
  • ダウンライトで統一したが、空間が平面的で単調な印象になった
  • 寝るときに照明の光が気になって眠れない
  • 明るさの調節ができず、常に同じ明るさしか選べない
  • 窓を設けすぎて間接照明が活きない
  • 天井デザインを意識せずに照明を配置し、垢抜けない印象になった

これらの失敗を防ぐためには、照明計画の段階で、空間の用途、明るさ、光の色、グレア対策、調光・調色機能などを総合的に考慮することが重要です。

照明計画は、家づくりにおいて非常に重要な要素です。適切な照明計画によって、同じ空間でも全く異なる表情を見せることができます。ぜひ、今回ご紹介した5つのポイントを参考に、快適で美しい光環境のある住まいづくりを実現してください。

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