新築やリフォームの際、間取りや内装にばかり気を取られがちですが、実はコンセントの配置計画こそが、住み始めてから大きく生活の質を左右するポイントなのです。
せっかくこだわって建てた家なのに、「ここにコンセントがあれば良かったのに…」と後悔する声は非常に多いんです。
家づくりの失敗ランキングでも上位に位置するコンセント配置の問題。今回は電気工事のプロとして、失敗しないコンセント計画の極意をお伝えします。
コンセント配置が住み心地を左右する理由
コンセント配置は、実は住まいの使い勝手に直結する重要な要素です。
新築やリフォームでは、壁紙の色や床材、キッチンの設備など目に見える部分に注目しがちですが、日々の暮らしの中で何度も使うコンセントの位置が悪いと、毎日のストレスになってしまいます。タコ足配線が床を這ったり、家具を動かさないとコンセントに手が届かなかったり…。
2025年現在、私たちの生活はますます電化製品に囲まれています。スマートフォンの充電はもちろん、キッチン家電、掃除機、エアコン、テレビ、パソコン…数え上げればきりがありません。
コンセントの位置や数が適切でないと、日常生活に支障をきたすだけでなく、見た目も美しくありません。
どうですか?あなたの家のコンセント、本当に使いやすい位置にありますか?
【部屋別】失敗しないコンセント配置計画
それでは部屋ごとに、コンセントの理想的な配置と数について詳しく見ていきましょう。
家電の置き場所や使い方を具体的にイメージしながら、最適なコンセント計画を立てることが大切です。一度工事が完了すると、後から位置を変更するのは大掛かりな工事になってしまいます。
リビングダイニング
家族が最も長く過ごすリビングダイニングは、特に慎重にコンセント計画を立てる必要があります。
一般的な8畳程度のリビングダイニングでは、最低でも4か所のコンセントを確保しましょう。テレビボードの位置が決まっている場合は、その近くに必ず1箇所設けることが重要です。
テレビ周りには、テレビ本体だけでなく、レコーダーやゲーム機なども接続することを考慮し、できればLANポート付きのマルチメディアコンセントを設置するのがおすすめです。
また、ソファに座りながらスマホを充電したい場合や、部屋の中央にあるダイニングテーブルでホットプレートを使いたい場合には、壁面にコンセントがないと不便です。
このような場合には「床用コンセント」の設置も検討しましょう。通常は床下に収納されていて、使うときだけボタン操作で出てくるタイプが便利です。
リビングダイニングのコンセントは、使用頻度が高いので数が多すぎて困ることはほとんどありません。将来的な家電の増加も見越して、余裕を持った計画を立てましょう。
キッチン
キッチンでは、冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器、トースターなど多くの電化製品を使用します。
キッチンにおすすめのコンセント数は「3〜4か所」です。まず冷蔵庫置き場には専用のコンセントを設けます。基本的に170〜180cm程度の高さにしておけば、メンテナンスがしやすく便利です。
また、2022年から内線規程が改訂され、キッチンなどの水回りでは「接地(アース)付コンセント」の使用が義務化されました。漏電などの事故を防ぐためにも、必ず接地付タイプを選びましょう。
近年では電気圧力鍋やホームベーカリー、コーヒーメーカーなど、様々なキッチン家電が登場しています。作業スペースの近くにもコンセントを設けておくと便利です。
洗面所・脱衣室
洗面所におすすめのコンセント数は「2〜3か所」です。
洗濯機置き場がある場合には、床から110〜130cmの高さに設置するのが一般的です。また、洗面台の近くにも1〜2か所コンセントがあると、ドライヤーやヘアアイロンを使用する際に便利です。
最近では、洗面所に衣類乾燥機や除湿器、サーキュレーターなどを置くケースも増えています。使用する可能性のある家電を事前にリストアップしておくと、必要なコンセント数が見えてきます。
コンセント配置の失敗例と対策
実際にあった失敗例から学び、同じ轍を踏まないようにしましょう。
コンセント配置の失敗は、住み始めてから気づくことが多く、修正するには大掛かりな工事が必要になります。事前に注意点を押さえておくことが重要です。
失敗例①:使いやすい位置にない
最も多い失敗は、使いたい場所にコンセントがないというシンプルな問題です。
例えば、リビングのソファでスマホを充電したいのに、近くにコンセントがなくて延長コードを這わせることになったり、キッチンで調理家電を使いたいのに、作業スペースから遠い位置にしかコンセントがなかったりします。
対策としては、家具のレイアウトや家電の配置を事前に詳細に計画し、実際の生活動線を想定してコンセントの位置を決めることが重要です。
どうでしょう?あなたは家具の配置を考えてからコンセントの位置を決めていますか?
失敗例②:数が足りない
特にキッチンやリビングでは、想定以上に家電が増えることがあります。
キッチンでは、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、トースター、電気ケトル、コーヒーメーカーなど、基本的な家電だけでも相当数になります。さらに最近では、電気圧力鍋やホームベーカリー、食洗機なども一般的になってきました。
対策としては、将来的な家電の増加を見越して、少し多めにコンセントを設置しておくことです。特に、カップボード上のコンセントは、幅180cm前後なら2〜3口を2か所、幅270cm前後なら2〜3口を3か所設けるのが理想的です。
失敗例③:家具に隠れてしまう
家具のレイアウトを変更したら、コンセントが家具の裏に隠れてしまい使えなくなった…という失敗例もよくあります。
対策としては、家具の配置計画と合わせてコンセントの位置を決めることが重要です。また、将来的なレイアウト変更も考慮して、各壁面に最低1箇所はコンセントを設けておくと安心です。
コンセントの高さも重要です。一般的な住宅のコンセントの高さは「床から25cm」が標準ですが、使用状況によっては高すぎても低すぎても使いにくくなります。
家具の高さや種類に合わせて、適切な高さを検討しましょう。
コンセント計画のチェックリスト
失敗しないコンセント計画のために、以下のチェックリストを活用してください。
間取りが確定した時点で、このリストを使って間取りに当てはめてみると、電気詳細の打ち合わせがスムーズに進みます。
外周り
- 防犯カメラ・照明用電源
- 高圧洗浄機
- DIYなど工具用電源
- EVコンセント(電気自動車用)
- 庭でBBQ(電気式調理器、電源式ランタン、音楽プレイヤー充電)
玄関・廊下
- 掃除機(コード式をお使いの場合)
- プラグインのディフューザー
- フォトフレーム
- 水槽(照明・ヒーター)
- 足元灯を設置する可能性
リビング
- エアコン(200V)
- テレビ、BLデッキ、ゲーム機(壁掛けテレビの場合、電源の取り方に注意)
- 通信環境(ルーター、モデム)
- 置き型照明用(クリスマスツリー)
- 空気清浄機
- 音響機器用(chスピーカー等)
- パソコン、プリンター
- スマホ等充電場所
- 補助暖房機器
このリストは一例ですが、あなたの生活スタイルに合わせてカスタマイズしてください。
私自身、リフォーム現場で「あぁっ!空気清浄機ここじゃなかったぁ、クリスマスツリーもここの方が良かった」と後悔した経験があります。事前の計画が本当に大切なんです。
プロが教えるコンセント配置の極意
最後に、電気工事のプロとして、コンセント配置の極意をいくつかご紹介します。
これらのポイントを押さえておけば、快適な住まいづくりに一歩近づけるでしょう。
高さにもこだわる
コンセントの高さは用途によって変えると使い勝手が良くなります。
一般的には床から25cmが標準ですが、テレビボードやキッチンカウンターなど、家具の高さに合わせて調整するとよいでしょう。
例えば、キッチンのカップボード上のコンセントは、天板から10〜20cmの高さが最適です。高すぎると家電より位置が高くなってコンセントやコードが目立ってしまい、低すぎると抜き差しがしづらくなります。
将来を見据えた余裕ある計画を
コンセントは多すぎて困ることはほとんどありません。将来的な家電の増加や家具のレイアウト変更も考慮して、余裕を持った計画を立てましょう。
特に、一つの用途に対して2か所の候補で悩んだら、思い切って2か所とも設置することをお勧めします。後から「こっちじゃなかった!」と後悔するよりも、初めから選択肢を広げておく方が賢明です。
コンセントの設置費用は新築時なら数千円程度。後から増設するとなると工事費込みで1万円以上かかることを考えると、初めから適切に設置しておく方がコスト的にも有利です。
まとめ:快適な暮らしはコンセント計画から
コンセントの配置計画は、住まいの快適さを大きく左右する重要な要素です。
家づくりやリフォームでは、間取りや内装、設備にばかり目が行きがちですが、日々の暮らしの中で何度も使うコンセントの位置が適切でないと、毎日のストレスになってしまいます。
今回ご紹介したポイントを参考に、ぜひ失敗しないコンセント計画を立ててください。
- 部屋ごとの適切なコンセント数と位置を把握する
- 家具のレイアウトと合わせて計画する
- 将来的な家電の増加も見越して余裕を持たせる
- 用途に合わせてコンセントの高さも調整する
快適な住まいづくりのために、ぜひ専門家のアドバイスも取り入れながら、理想的なコンセント計画を立ててください。
新築やリフォームをご検討中の方は、間取りプランの段階からコンセントの配置も含めた総合的な計画を立てることをおすすめします。