間取りの決め方と優先順位の重要性
一生に一度の買い物と言われる注文住宅。その家づくりで最も重要なポイントの一つが「間取り」です。理想の暮らしを実現するためには、家族のライフスタイルに合った間取りが不可欠です。しかし、間取りの決め方や優先順位の付け方がわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
注文住宅の魅力は自由な間取りで家が建てられることですが、住んでみるまでは具体的なイメージがわきづらく、思わぬ失敗をしてしまうことがあります。実際、注文住宅購入者の約85%が「何かしらの後悔がある」と言われています。
この記事では、間取りの決め方の基本から優先順位の考え方、よくある失敗例まで、後悔しない家づくりのための秘訣をご紹介します。これから家づくりを始める方はもちろん、すでに計画を進めている方も、ぜひ参考にしてください。
間取りを決める前に考えるべきこと
間取りを考える前に、まず家づくりの大きな枠組みを決めることが重要です。家づくりの優先順位は一般的に以下の順番で考えられています。
- 予算・資金計画
- 立地・周辺環境
- 間取り
- 設備
- 住宅性能
- 外観
特に「土地選び」は間取りに大きな影響を与えます。同じ外観、同じ間取り、同じ住宅性能の家であっても、敷地面積や周辺の環境、隣家や通りとの位置関係によって、完成した家の暮らしやすさは大きく変わってきます。
平屋の家を建てる場合と、二階建て住宅を建てる場合では、同じ床面積で比較すると、平屋の方が広い敷地が必要です。日当たりや風通しの良さ、プライバシー確保という面から考えると、平屋の方が隣家からの距離をとる必要があるため、二階建てより敷地に余裕が必要になります。
どうしても平屋にしたいなら利便性は多少悪くても広い土地を探す、限られた予算の中で家族全員が十分な居住面積を持てるようにしたいから二階建てにするなど、家族の夢と予算を考え併せた上で、家の形を決めていくことが大切です。
家族の暮らし方から考える間取りの決め方
間取りを決める第一歩は、家族の暮らし方をシミュレーションすることです。家族の暮らし方は家族によって大きく異なります。家にいる時間は皆が揃ってリビングで過ごす家族もあれば、夕食後はそれぞれが自分の部屋で過ごす家族もあります。
生活の時間帯が帰宅時間以外はほぼ同じで、朝食は家族揃って頂く、仕事で帰宅の遅い一家の働き手も週末には家族で夕食を楽しむ、共働きでご夫婦が順番にお迎えに行っている、二世帯住宅で親世帯に子育てを手伝ってもらっているなど、100の家族があれば、100通りの暮らし方があります。
その暮らし方に合わせて間取りを決めていかなくてはなりません。具体的には以下のポイントを考慮しましょう。
LDKの広さと配置
家族が揃ってリビングにいる時間が長い家族なら、広いリビングが必要です。一方、既に子供たちが成長し、自室で過ごすことの多い家族なら、書斎や趣味の部屋、子どもの勉強部屋をゆったりさせ、無人になるであろうリビングに面積を割く必要はないかもしれません。
夕食を家族揃って頂く家族ならゆったり座れるだけのダイニングスペース、生活の時間帯がずれているので、共に食事をすることはほとんどないという家族なら、ちょっとしたダイニングスペースにし、浴室や洗面所をゆったりさせるなど、他の部分に有効に床面積を充てるという考え方もできます。
LDKの面積は1階部分の間取りに大きな影響を与えます。広いLDKを確保すると、他の部屋が犠牲になることもあるため、家族の生活スタイルに合わせて適切な広さを決めることが重要です。
生活動線の設計
家事動線や通勤動線、衛生動線などの生活動線を意識した間取りになっているかチェックしましょう。例えば、買い物から帰ったらすぐに食材をしまえるように、玄関からキッチンまでスムーズに行ける動線をつくると負担が減ります。
洗濯をするときの動線や料理をするときの動線など、「家事動線」を考えることはとても重要です。その他にも、通勤動線や衛生動線、お客様がいらしたときの来客動線など、優先順位に沿って、便利で快適な暮らしができる間取りを検討していきましょう。
間取りを決める際のチェックポイント
間取りを決める際には、以下のポイントをしっかりとチェックしましょう。これらのポイントを押さえることで、住み始めてから「こんなはずじゃなかった」という後悔を減らすことができます。
採光と風通し
太陽の光は生活に欠かせないので、間取りを検討する上で考慮するべきことの一つです。リビングなど家族が長い時間を過ごす場所は、日当たりが良くなるよう意識しましょう。
一方で、トイレなどの水回りや納戸のような場所は、採光の優先順位は低いです。また、快適に暮らす上で、風通しが良くなるように工夫することも大切です。一つの部屋に窓を2つ以上配置すると換気効率が良いとされています。
北と南、西と東のように、対面になるように窓を配置するとより効率的に室内に風をとおすことができますよ。ただし、西側に大きな窓を設置すると、西日がまぶしく夏場は暑くなるので注意が必要です。
将来の家族構成
現在の家族の人数だけを考慮して間取りをつくると、将来家族の人数が増えて部屋が不足したり、子どもが独立して不要な部屋が出てきたりする可能性もあります。間取りを決める際には、5年後、10年後などの将来の家族構成についても考えましょう。
例えば、子どもが成長し10年後には子ども用の部屋が必要になるかもしれません。また、親の介護が必要になる可能性も考慮しておくと良いでしょう。将来的な変化に対応できる柔軟性のある間取りを心がけることが大切です。
収納スペース
収納スペースが足りないという失敗だけでなく、多すぎたという失敗も少なくありません。何をどこに収納するのかを具体的にイメージしておくことが大切です。収納の場所だけでなく、扉の開く方向や明るさにも注意しましょう。
階段下収納を設計したが、市販の棚やカラーボックスと形があわず、結局デッドスペースになってしまった。照明をつけ忘れてしまい、奥のものが暗くて見えない。寝室のクローゼットの折れ戸がベッドに当たってしまうので扉を全開にできない。
こういった失敗例は少なくありません。収納スペースは使い勝手を考慮して計画することが重要です。
よくある間取りの失敗例と対策
家づくりでよくある失敗例を知っておくことで、同じ失敗を避けることができます。ここでは、実際にあった間取りの失敗例とその対策をご紹介します。
温度・空調に関する失敗
リビングが広すぎて空調がなかなか効かない。オープンキッチンを採用したが、料理を始めるとリビングの温度がかなり上がる。リビング階段にしたら、暖気が2階に上がってしまいリビングが寒い。
子どものためにロフトを計画したが夏は熱気がこもり暑くて過ごせない。南向きの間取りを意識したが、夏は日差しが強く暑い。
室内の温度に関する失敗を防ぎながら、開放感の得られる広い空間を実現するのは難しいものです。建物の断熱性能や気密性能を住宅会社に確認するとともに、大きな吹き抜けには床暖房など、空間に合った空調設備を備えるようにしましょう。
視線・プライバシーに関する失敗
開放的なリビングに憧れ大きな窓を設置したが、外からの視線が気になり、結局はカーテンを閉めっぱなしに。玄関ドアを開けると、通りを歩く人から室内が丸見えになってしまう。
道路面にバルコニーを設置してしまい、通行人の視線が気になって洗濯物が干せない。リビングの扉が開いていると玄関からリビングが丸見えなので恥ずかしい。
外部からの視線に関しては、図面や写真からは想像がつきにくいものです。家を建てる敷地に実際に足を運んで、隣家の窓や接する道路からの視線を体感してから間取りや開口部の計画を立てましょう。
音に関する失敗
リビングの上にフローリングの子ども部屋をつくったら、子どもが走る音、何か落とす音などが1階に響いてうるさい。家の前の道路の交通量が意外に多く、道路側に寝室はNGだと痛感。
吹き抜けリビングは家族に声をかけやすくていいが、来客のときに声が家中に丸聞こえになる。
足音のする通路や部屋がくつろぎ空間の上の階に配置されていないか、人通りの多い道路沿いの部屋に寝室や子ども部屋が配置されていないか確認しましょう。音の発生源との配置を意識しましょう。
どうしても気になる場合は、防音対策を講じることも検討しましょう。
間取りの優先順位の決め方
注文住宅を購入する際は、予算や立地、間取り、設備など検討すべきことが数多くあります。その中で特にどの部分を重視するのか、優先順位の決め方で悩む人は少なくありません。
優先順位を決めることで、どの部分に予算を重点的に配分するかが明確になります。例えば、キッチンやリビングのデザインにこだわりたい場合、その他の部分でコストを抑える工夫が必要です。予算内で最大限満足できる家づくりを行うために、条件の優先順位を決めましょう。
理想のライフスタイルを想像する
まずは、家族全員で理想のライフスタイルについて話し合いましょう。「休日は家族でリビングでくつろぎたい」「趣味に没頭できる空間が欲しい」「家事の負担を減らしたい」など、それぞれの希望を出し合います。
この段階では、予算や現実的な制約は一旦置いておき、純粋に理想の暮らしをイメージすることが大切です。理想の暮らしが明確になれば、それを実現するために必要な要素が見えてきます。
譲れない条件を1つ決める
家族の希望をすべて叶えるのは難しいことがほとんどです。そこで、家族で話し合い、絶対に譲れない条件を1つ決めましょう。「広いリビング」「充実した収納」「快適な寝室」など、家族にとって最も重要な要素を明確にします。
この譲れない条件を中心に間取りを考えることで、優先順位が明確になり、予算配分も効率的に行えるようになります。
妥協できる項目を明確にする
譲れない条件を決めたら、次は妥協できる項目を明確にしましょう。例えば、「来客用の部屋は必要ない」「バルコニーはコンパクトでも良い」「外観のデザインはシンプルで良い」など、優先度の低い項目を洗い出します。
これにより、限られた予算や敷地面積の中で、最も重要な要素に資源を集中させることができます。
家族間でしっかりと意見を交わす
優先順位を決める過程では、家族間でしっかりと意見を交わすことが重要です。それぞれの希望や譲れない条件、妥協できる項目について、オープンに話し合いましょう。
家族全員が納得できる優先順位を決めることで、後々の不満や後悔を減らすことができます。また、工務店やハウスメーカーとの打ち合わせもスムーズに進みます。
あなたの家族にとって、どんな暮らしが理想ですか?
後悔しない家づくりのための具体的なステップ
後悔しない家づくりを実現するためには、計画的に進めることが大切です。以下のステップを参考に、理想の家づくりを進めていきましょう。
ステップ1:土地の形状や方角・周辺の環境を確認する
間取りを設計する際には、その土地が面している道路のタイプや、土地の形状や方角などの情報を把握することが大切です。例えば、人通りが多い道路に面している場合は、外部からの視線が入りにくい間取りにすると良いでしょう。
バルコニーの位置は、土地の方角を考慮して、日当たりが良くなるように設計します。また、居室や納戸、建ぺい率などの基礎的な住宅用語を把握しておきましょう。よく使用する住宅用語を事前に調べておくことで、設計者や担当者に「自分たちのこだわり・要望」を伝える際にも役立ちます。
ステップ2:家族の希望や優先順位・生活動線を考える
家づくりをするのであれば、家族全員の希望をできる限り反映させたいものです。しかし、家族間で意見が一致しないこともあります。何を重視するのか良く話し合い、優先順位を決めましょう。
また、生活動線を具体的にシミュレーションすることも大切です。例えば、買い物から帰ったらすぐに食材をしまえるように、玄関からキッチンまでスムーズに行ける動線をつくると負担が減ります。
ステップ3:ゾーニングを決める
ゾーニングとは、部屋や土地などの空間を用途や機能ごとに分類して決めることを指します。例えば「この部分は庭、ここから先は駐車場」といった形です。
建物内での人の動きなどを考慮し、各部屋の位置を決めていきます。住居にはダイニングやリビングなどの「パブリックゾーン」、寝室や子ども部屋などの「プライベートゾーン」、浴室などの「サービスゾーン」、廊下や階段などの「通路ゾーン」が必要です。各ゾーンの大まかな配置を決めておきましょう。
ステップ4:納得するまで間取りを検討する
大まかなゾーニングを決めたら、具体的に間取りプランを練っていきます。家族の人数にあわせて部屋の数や収納スペースの広さを検討し、採光や風通し、日当たりを考慮してドアや窓の位置を決めていきましょう。
納得いくまで何度も検討を重ね、完成後のイメージを具体的に思い描くことが大切です。必要であれば、モデルハウスや完成見学会に足を運び、実際の空間を体感することも役立ちます。
まとめ:後悔しない家づくりのために
間取りの決め方と優先順位について、様々な観点からご紹介してきました。後悔しない家づくりのためには、家族の暮らし方をしっかりとシミュレーションし、優先順位を明確にすることが重要です。
土地選びから始まり、家族の生活スタイルに合わせた間取りの検討、採光や風通し、将来の家族構成の変化なども考慮しながら、理想の住まいを計画していきましょう。また、よくある失敗例を参考にして、同じ失敗を繰り返さないようにすることも大切です。
家づくりは一生に一度の大きな買い物です。時間をかけて丁寧に計画を進め、家族みんなが満足できる住まいを実現してください。